【書評】今を乗り切るための知識を手に入れる『新しいDX戦略 未来ビジネス図解』

【書評】今を乗り切るための知識を手に入れる『新しいDX戦略 未来ビジネス図解』

みなさんは、「DX」という言葉をご存じでしょうか?デジタルトランスフォーメーションの略ですが、今、ビジネスの現場において不可欠な存在となっています。しかし、「DXとは具体的にどんなものかわからない」というのが本音です。そこで今日は、DXの基本的知識がまとめられた一冊をご紹介します。


著者・あらすじ

内山悟志

株式会社アイ・ティ・アール、会長/エグゼクティブ・アナリスト。大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパン(現ガートナー ジャパン)でIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立、代表取締役に就任し、プリンシパル・アナリストとして活動を続け、2019年2月より現職。企業のIT戦略およびデジタルトランスフォーメーションの推進のためのアドバイスやコンサルティングを提供している。

あらすじ

デジタルイノベーションの専門家が、「DX」についてまとめます。「『DX』とは?」「『DX』で何が変わる?」「『DX』の使い方」など、DX初心者が知るべき、基本と扱い方について網羅します。

1. 「DX」とは?

本書は「DX」についてまとめられたものですが、そもそも「DX」とは何のことを指すのでしょうか?「DX」とは、Digital Transformationの略で「デジタルで変革する」といった意味になります。この概念は、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、その定義は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と述べています。

経済産業省の『DX推進ガイドライン』では、さらに具体的な定義があります。それによると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。つまりDXとは、単にAIやIoTなどの先進的なデジタル技術を活用するのが目的ではなく、それら技術によって製品やサービス、ビジネスモデルを変革することが目的ということになります。

現代のビジネスシーンでは、デジタル技術は「手段」といった位置づけですが、国が推進することを踏まえると、今後、「手段」ではなく、「前提」に変わっていくでしょう。著者は「すなわち、DXとは『企業をデジタルで変革する』のではなく、『企業をデジタルに変革する』ことを意味する」と言い、企業は今、この状況下に対応しなければならないのです。

2. 「DX」で何が変わる?

では、DXの出現によって、わたしたちの生活はどのように変化していくのでしょうか?そもそもITとDXの違いは、私たちの身近な生活の空間である物理的な世界への「浸透の度合い」にあります。ITが主に企業や業務やビジネスなどの分野で活用されてきたのに対し、DXはデータをやり取りする対象はコンピュータだけでなく、エアコンや自動車などの身近なものまで浸透します。つまり、DXはコンピュータが扱える領域を、物理的な世界に広げているといった特徴があるのです。

では、このDXの浸透度によって、社会はどのように変化するのでしょうか?注目すべきは「AI」の存在です。AIとは人工知能のことですが、AIにはそもそも実現レベルが4つあります。「レベル1」は、言われたことを言われたとおりに実行する、単純な制御機能のことです。気温の変化に応じて機能を制御する冷蔵庫やエアコンなどがそれにあたります。「レベル2」では、人間の知識や判断基準、ルールなどを与えれば、人間を模倣できることです。将棋のプログラム、掃除ロボット、単純な質問に答えるボットなどがそれにあたります。

「レベル3」では、判断軸があれば、データからルールを設定・学習して、より良い判断ができることです。検索エンジン、大量のデータからの予測モデル作成などがそれにあたります。「レベル4」では、判断軸を自ら発見し、自らのルールで設定し、判断を下すことができることです。一連の検査結果からの病気の予兆を自動検出したり、画像を自動分類したりします。このレベル4のAI技術を用いた、「胃がん検査」では、陽性的中率が93.4%、陰性的中率は83.6%と、高い的中率を検出した事例もあります。このように、DXはわたしたちの生活により密着したデジタル技術だったのです。

3. 「DX」の使い方

ではDXは、わたしたちの最も身近なビジネスシーンにおいて、どのように浸透してくるのでしょうか?ここで紹介するのは、「業務の量と質」「RPA・AI」の2つです。

「業務の量と質」

企業の業務には、付加価値業務とオペレーション業務があります。多くの企業は全業務量の大半をオペレーション業務に費やしていると言われ、DXは、このオペレーション業務を代替してくれるのです。手書きの紙ベースの書類、手作業、目視、対面といった業務は、デジタル技術によって置き換えられたり、自動化できたりします。また、データがデジタル化し、可視化することによってミスも減ります。

「RPAやAI」

「RPA」とは、ロボティックプロセスオートメーションのことですが、これにより労働時間を削減できた実例があります。低温物流を手掛けるニチレイロジクールは、年間18万時間の業務のRPA化を達成し、物流センターの従業員の年間総労働時間の約6%を削減しました。また、医療法人社団高輪会は、毎月6万件以上のカルテデータをレセプトコンピュータに入力していましたが、RPAにより完全自動化。年間2,260時間を削減することができたといいます。アサヒ飲料ではAIを活用し、生産計画、在庫管理の最適化を目指しています。実証実験では、人による判断に比べて精度が向上したことが確認できました。

このように、ビジネスシーンにおいても、DXは大きなメリットがあったのです。

まとめ

『新しいDX戦略』をご紹介しました。著者は、あとがきで「3回目の緊急事態宣言の渦中で本書を執筆しましたが、デジタルの恩恵を受けて、不自由なく仕事も生活もできている」と述べています。デジタル技術の到来は、わたしたちの生活を大きく変えるものです。しかし、旧態依然の考えや先入観に囚われていると、恩恵が受けられないどころか、時代に取り残されてしまうでしょう。コロナ禍もあって、このDXがますます浸透せざるを得ない状況になっているのです。

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