写仏とは何か
心を落ち着かせたい時にメリットがある「写仏」とは、仏さまの絵の上に薄い紙を重ねて写し描きすることです。誰でもでき、特別な経験やスキルが必要ないため、絵画が苦手な人にも美しい仏さまの絵が描けるようになります。
仏さまの絵画はとても精密で、いきなり白紙に書いていくのは大変ですが、下絵をなぞるだけなのでアイデアを考えなくても集中できるでしょう。
写経はよく聞かれますが、写仏というのはあまりなじみがないかもしれません。でも自宅待機中にアートに興味を持つ人が増え、写仏も趣味として密かに注目されています。
始まりは9世紀初頭、当時の嵯峨天皇が弘法大使空海に相談をしたところ、疫病を抑えるアイデアとして提供されます。その際に嵯峨天皇は、写経した般若心境の表紙に薬師三尊の書き写しをしたことが写仏の始まりとされています。
写仏から得られるメリットについて

写仏は心を落ち着かせたい人に効果が期待され、とくに見えない不安の中で暮らす時には心強い励ましにもなります。写仏の効果は描く「瞑想」といわれるように、頭の中の雑念を取り払い無の状態で集中できること。
自分と向き合う静かな時間を得られることが特徴です。物ごとに没頭することは、もやもやした気持ちを空っぽにすることができるため、写仏をした後はなんともいえない爽快感を得られる可能性もあるでしょう。
写仏は精神統一の修行としても行われていますので、内側にある邪念を浄化するためにもオススメなのです。また仏さまの絵はとても細かく描かれ、細い線や点など下書きがあっても見逃してしまう細部があります。
線をにじませないよう描き続けるには集中力が必要なので、写仏を通じてさらに集中力が磨かれることも期待できます。何よりも写仏をしている間は自分一人の世界で、周囲の情況から切り離されますよね。この間に自分が描く仏さまと向き合い、心のコミュニケーションもとることができるでしょう。
写仏で描く仏さまの種類について
心を落ち着かせたい時、リラックスしたい時、不安な時にオススメの写仏は、全ての仏さまが対象になるのではなく、主に「如来」「明王」「菩薩」「弘法大師」が選ばれます。
とくに写仏でも人気がある弘法大師は、書家としても優れ、「弘法筆の誤り」という言葉があるように繊細な筆使いで知られています。
写仏のきっかけを作った嵯峨天皇と共に唐に渡った橘逸勢にならび、平安の三筆とも称されています。嵯峨天皇が写仏した薬師三尊は、仏教における仏像安置形式のひとつで、日航菩薩や薬師寺の金堂本尊像なども傑作。あらゆる仏さまがいるので、実際に手を合わせられない時は写仏で仏さまに寄り添うこともオススメです。
写仏のやり方について

女性を中心に人気が広がっている写仏は、市販のキットを使うことや、ネットで仏さまの絵をダウンロードして、トレーシングペーパーに鉛筆やボールペンを使いなぞり書きをする方法があります。
基本的には専門的な道具などは不要ですが、精神修行の一環として行う際には、写仏の前に手洗いと口をすすいで清めてから始めましょう。
また写仏をスタートする時と終わった時は合掌すること。背筋をピンと伸ばして、写仏だけに意識を集中させてくださいね。また自分で始める以外には、写仏のイベントやサークルなどもありますので、仲間を見つけて活動することもオススメ。近年仏像人気が高まっていますので、写経や写仏体験がツアーに組み込まれている場合もあります。
描いた仏さまは納仏しよう
写仏で美しく描き上げた仏さまは、お守りとして大切に保管することもできますが、心願成就したい場合には納仏することもできます。
その場合はお寺などに確認をして、御祈願できるかを聞いておきましょう。写仏や写経は、お寺から道具を入手することもできるはず。
仏さまの尊像を写すことは、仏道を学ぶ人の修行や勉強として昔から行われていますので、心静かに下絵を見ながら自分自身を表現するように写仏してください。
まとめ
仏さまが薄紙に浮き上がってきた時は、心の迷いがさっと消えるでしょう。心を落ち着かせたい時は、丹念に線を写しながら美しい仏像を描いてみてくださいね。普通の絵画とは違った楽しみや喜びが実感できるはずなので、何か始めたいと思った時は心を込めた写仏で不安をかき消してくださいね。文字を書き写す写経とは違い、アート的な要素もありますので、絵画が好きな人にも充実した時間が過ごせるでしょう。