著者・あらすじ
上阪徹
1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年にフリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。
あらすじ
「書くこと」の専門家が、「文章が書けない問題提起」とその「解決法」をまとめます。「文章が書けない理由」「出戻りしてしまう理由」「スラスラ書くには?」など、文章下手を克服するためのノウハウが学べます。
1. 文章のプロが発見したこと
著者は文章を書く仕事を25年間も行ってきました。そこで発見したことが2つあります。一つが「立派な文章を目指す必要はない」です。私たちは文章を書く時、どうしても「名文」を意識してしまいます。しかし、これが「書けなくなる」一番の原因だったのです。とりわけビジネスシーンにおいて、高尚で文法的にも正しい名分は必要ないのです。
もう一つの発見が、『「素材」に目を向ければ、すぐに書けてしまう』です。文章を書く時、多くの人が陥ってしまうのが「どう書くか」ということです。この「どう書くか」が、文章が書けなくなる原因だったのです。著者は「どう書くか」より「何を書くか」が重要と述べており、この「何を」といった素材を意識することがポイントです。
素材とは、いわば「中身」のことで、例えば、「うちの商品は素晴らしいです」といったコピーがあったとします。しかしこれだけでは、その商品の良さを伝えることはできません。したがって、「世界で30万個売れました」「ランキングで1位を獲得しました」「注文数が年々上昇しています」といった「素材」に目を向けることで、スラスラと書くことができるのです。以上を踏まえ、名分を意識するのではなく、素材を意識することが、文章を書くコツだったのです。
2. 時間がかかってしまう人へ
文章下手な人は、とにかく「書くことに時間がかかってしまう」といいます。著者はその原因を2つ提起します。一つが「書きながら考える」です。書くことに時間がかかってしまう人の特徴として、「いきなり書き始めること」があげられます。なんの準備もしないまま、いきなりパソコンに入力しようとするので、途中で書きたいことを忘れたり、何を書こうか迷ったりしてしまいます。結果、時間ばかりが過ぎてゆくのです。
もう一つの原因が「最初から完璧を目指す」ことです。書いているうちに細かいところが気になり、修正しているうちに時間ばかりが過ぎていきます。さらに「丁寧に書こう」とすると、「この敬語でいいのか?」「お客様に見せるものだから」と、完璧を目指すあまり、時間がかかってしまいます。では、どうすればこの2つの状態に陥らずに済むのでしょうか?まずやるべきことが「素材を整理すること」です。
先にも述べましたが、文章を書きやすくするのが「素材」です。素材は「事実」「数字」「エピソード」の3つに分けられ、それらを集めることを優先します。そして、後で推敲するつもりで「荒々しく」書いていきます。文字数や言葉の使い方などは気にせず、ひたすら書くことで、文章の土台ができあがるのです。文章が書けない原因を踏まえつつ、素材に目を向け、とりあえず書くことが、スラスラ書けるコツだったのです。
3. 「書類直しておいて」が多い人へ
渾身の書類や企画書をつくりあげたのに、上司から「書類直しておいて」と何度も出戻りになる人がいます。こんな時、どうすればいいのでしょうか?原因として考えられるのが、発注者のイメージとの「ズレ」「凡ミス」です。発注者が求めているものと、仕上がった文章の間にギャップがあると、出戻りの原因になります。これは仕事の目的やゴールが、あやふやなまま進めてしまった結果です。また「凡ミス」によって、相手に悪い印象を与え、出戻るケースが多々あります。
「ミスはある」ということを前提として、推敲することが重要になってきます。著者は出戻りを防ぐためのコツとして、『「真の目的」と「読み手」をしっかり確認する』をあげます。「真の目的」とは、書く前からわかっている表面上の目的ではなく、さらに掘り下げた「真の目的」のことを指します。「真の目的」とは、読み手や発注者の「ベネフィットが見える目的」のことです。
例えば「会議の議事録」。議事録の表面上の目的は「議事録を作成すること」ですが、「真の目的」は、「部内で共有するので、会議のポイントだけをまとめたものがほしい」といったものです。このように、表面上の目的のさらに奥にある「真の目的」に目を向けることが重要になってくるのです。以上を踏まえ出戻りを防ぐには、その文章を通じて、読み手や発注者が「どう思うか」を見据えながら、文章を書くことが必要不可欠でした。
まとめ
『文章の問題地図』をご紹介しました。わたしたちは文章を書くとき、「よく見られたい」と思ってしまいます。その理由は、文章は「残ってしまうもの」だからです。これにより、「文章が書けない」といった状態に陥ります。まずは、他人の目を気にせず、思ったことから書き出すことで、文章アレルギーを克服することができるのです。