【書評】お金の達人から学べ『「東の大富豪」の教え ユダヤを超える「成功の本質」』

海外投資家。社会心理学者。1975年日本生まれ。香港在住。株式会社ダイエー、P&Gなどの企業勤務を経て、2005年、国際結婚で香港移住。香港理工大学経営大学院、香港大学大学院で金融学と社会心理学を学ぶ。野村国際香港(野村證券香港)勤務後、香港での事業経営の傍ら海外不動産投資をスタートさせ、毎年1500万円から2000万円の不労所得を得ている。多数の海外富裕層、特に華僑の大富豪から教えを受け、「お金と運」を学び、出産を機に、夢だったライフワークを実現させるため、30代後半から社会心理学者の道を選ぶ。

華僑の教えで成功した著者が、「成功哲学」について語ります。「東の大富豪とは？」「成功に必要なものとは？」「幸運を引き寄せる方法」など、世界の大富豪だけが知っている知恵がまとめられています。

本書のタイトルにもある「東の大富豪」とは一体、どんな人たちのことを指すのでしょうか？それが「華僑」です。「華僑」とは、海外に移住した中国人のことで、「西のユダヤ人、東の華僑」といった言葉にもあるように、「お金儲けに強い人たち」のことを指します。アメリカのニューヨーク、オーストラリアのシドニー、日本の横浜中華街など、華僑にはビジネスや投資で、経済的に成功している人が数多くいるのです。

その資産規模は、世界長者番付レベルの富豪と言われます。本書はそんな華僑から教えを受け継いだ著者がまとめたものです。東の大富豪が教える成功している人の共通点として、「パーソナル・ブランディング」があります。「パーソナル・ブランディング」とは、自分自身が一つの「ブランド」になることで、自分の強みやユニークな持ち味を生かして、「オンリーワン」を目指します。

なぜ「パーソナル・ブランディング」が成功に必要なのかというと、これからの時代、人と同じことをしていたのでは、成功できないからです。例えば「モノを売る」のであれば、既存のモノを作って、既存の売り方をしていたのは、過当競争になってしまうでしょう。新しい製品を開発する、知識や情報といった「知的な付加価値」を提供することが、これからの時代に求められる成功哲学だったのです。

成功者の多い華僑では、「成功者は幸運をコントロールすることができる」といった教えがあります。どのようにコントロールするのかというと、日常的に次の5つを意識することです。

① 成功には、お金の知識、経営や投資のスキルといった実践的な方法だけでなく、「幸運」の後押しが必須であること。それを徹底的に理解すること
② 「幸運の示す方向」にしたがって変化を柔軟に受け入れること
③ チャンスのあるところなら「幸運の示す方向」にしたがって、住んでいる国・地域を超えてどこにでも飛び込んで行くこと
④ 「人」が「幸運」を運んでくること、その「幸運」が次の「価値ある人」を運んでくること
⑤ 「幸運」の後押しで得られた「成功」（お金・地位・より価値のあるチャンス）をみんなで「分かち合う」ことが大切だということ

普段からこれらを意識していると、あることが起きます。それが「意味のある偶然の一致」です。「意味のある偶然の一致」とは、いわば「シンクロニシティ」のことで、自分の行動、事柄が正しい方向に進んでいると、自分に都合のよい偶然の出来事が頻発する現象のことです。華僑の人たちは日頃から、先に挙げた5つのことを意識し、シンクロニシティを起こして成功していたのです。

成功には「幸運」が必要不可欠ですが、華僑の人たちはこれを意図的に起こすことができます。それが次の7つの知恵です。

① 日常で起こるどんなささいな幸運も見逃さない「感性」を磨く
② 過去から現在にいたる「自分のすべて」を徹底的に肯定する
③ チャンスを迎え入れるために、より柔軟な生き方を身につける
④ 何かを期待する姿勢を保ち、現実化している自分をイメージする
⑤ どんな変化も受け入れられる考え方と行動力を身につける
⑥ いつ成功してもいいように心と行動の準備をする
⑦ つらい努力で物事を進展させようとする古いパターンから自由になり、自然に人生の流れに身を任せるための信頼感をつちかう

特筆すべきは、『①日常で起こるどんなささいな幸運も見逃さない「感性」を磨く』です。そもそも、「意味のある偶然の一致」は、自分の「洞察力」や「直感」がある程度、高まっているときに発生しやすくなるといいます。この「洞察力」を高めるには、自分への執着やこだわりを一度手放して、常に新しい情報に心を開くことが大切だといいます。

とりわけ、「○○すれば、○○になる」といったように、自分のパターンの結果がわかっている時は注意が必要です。せっかくの新しいパターンを見逃すことになるからです。したがって、結果ではなく「プロセス」に焦点を当てることが必要となってくるのです。

『「東の大富豪」の教え ユダヤを超える「成功の本質」』をご紹介しました。本書の中で、気になったフレーズが「“人柄の良さ”“努力の度合い”とお金は関係ない」です。一般的に、「礼儀正しく、人望のある人が成功し、結果的にお金持ちになる」と言われます。しかし、このフレーズからすると、やはり「日常の奇跡」がモノを言うことがわかります。以上踏まえ、「意味のある偶然の一致」に目を向けることが、成功のカギだったのです。