【書評】成功に必要な「もう一つの力」を知る『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』

【書評】成功に必要な「もう一つの力」を知る『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』

「正しいことを言っているのに、理解してもらえない」「セオリー通りにやってもうまくいかない」とジレンマを抱える人がいます。なぜ彼は成功できないのでしょうか?これはもしかしたら「身銭を切っていない」ことが原因かもしれません。そこで今日は「身銭を切る」ことについてまとめられた一冊をご紹介します。


著者・あらすじ

ナシーム・ニコラス・タレブ

文筆家、トレーダー、大学教授および研究者という三つの顔を持つ、現代の急進的な哲学者。現在、ニューヨーク大学タンドン・スクール・オブ・エンジニアリングでリスク工学の教授を務める。

あらすじ

ニューヨーク大学のリスク工学の教授が「身銭を切る」ことの重要性を説きます。「身銭を切るとは」「なぜ身銭を切るのか?」「身銭を切るメリット」など、人生全般における既成概念を覆す内容になっています。

1. 「身銭を切る」とは?

本書のタイトルでもある「身銭を切れ」。この「身銭を切る」とは一体、どんな意味なのでしょうか?一般的に「身銭を切る」というと、金銭的な話を想像しますが、著者は「損害の一部を背負い、何かがうまくいかなかった場合に相応のペナルティを支払う」と定義します。では、「身銭を切る」と何が起こるのか?

それが文明化に伴って広がっていく、「インセンティブ」「倫理」「契約理論」「学習」「カントの定言命法」「地方分権」「リスクの科学」「確率論的な社会的公正」「まっとうな行動」「神学」などの数々の「剥離」を抑えることができるのです。

「不寛容な少数派が世界を支配していること」「なぜ普遍主義者は人々に害をもたらすのか?」「なぜ古代ローマ時代より、現代のほうが奴隷が多いのか?」「なぜ生存こそが合理性の唯一の尺度なのか?」などの疑問に答えを出すことができるようになります。

例えば「学習」を考えたとき、「痛み」こそが学びを助けます。なぜならリスクをとらない学びは、学びにならないからです。そもそも人間は教育などのシステムによって学習するのではなく、身銭を切る(リスクを背負う)ことで学習できるのです。このことから、「身銭を切る」とは、何か行動してうまくいかなかった時に、ペナルティを支払うことで、結果的に大きなものを得ることができるという意味だったのです。

2. 「非対称性の原理」とは?

著者は本書のタイトルをもっと正確につけるとすれば「身銭を切ることの意外な側面、隠れた非対称性とその影響」と述べています。実のところ、「身銭を切る」と同様に知っておかなければならないことがあります。それが「非対称性」です。「対称的ではないもの」といった意味ですが、ここで知るのは非対称性の生みの親「少数決原理」です。

「少数決原理」とは、ある種の非妥協的な少数派集団が、例えば総人口の3、4%という割合に達しただけで、他のすべての人が彼らに従わざるを得なくなるといった原理を指します。著者のエピソードで言えば、バーベキューをしていた時、そこに戒律に厳しい「コーシャ食品(ユダヤ教徒が食べてもよいと認定された清浄な食品)」しか食べない友人がやってきました。そこで著者ははじめて、飲み物のほとんどがコーシャ食品であることに気づきます。

著者はここで疑問を抱きます。「コーシャの人口はアメリカの総人口の0.3%未満なのに、ほとんどの飲み物がコーシャなのはなぜ?」これは、すべてコーシャにしてしまえば、生産者やスーパー、レストランなど、コーシャとそれ以外を区別しなくてすむからです。

コーシャ食品を食べる人は、コーシャ食品しか食べられませんが、それ以外の人はコーシャ食品を食べられるので、全体を変えてしまえば問題ないのです。つまり、妥協できない少数派の人々が存在すれば、妥協できる他の人たちは、その少数派に従わなければならないのです。これを踏まえると非対称性が事実として存在しており、わたしたちはそれに従って生きていることがわかります。

3. 「身銭を切る」ことのメリット

著者は、テーマのひとつとして「生きるとはある種のリスクを冒すこと」をあげています。これはプロがプロとして認められる、本物が本物として認められるには、「リスクを冒さなければならない」と言い換えることができます。著者のエピソードとして、「パーティーで出会ったマジシャン」と「トランプ大統領の勝利」をあげています。

「パーティーで出会ったマジシャン」

ある日のディナーパーティーで著者は、デイヴィッドという礼儀正しい人物と出会います。ディナーの途中、彼はおもむろにアイスピックに手に取り、手に貫通させました。後にわかったのは、彼はかなり有名なマジシャンであったことです。驚くべきは、パーティーが終わった後、デイヴィッドがロッカーの前で、手から流れる血をハンカチで拭っていたことです。彼は本当にアイスピックで手を貫通させていたのです。あらゆるリスクを背負って彼は、マジシャンという職業を生業としていたのです。ここで著者は、彼が本物であると感じます。まさに「身銭を切る」ことで得られた証しだったのです。

「トランプ大統領の勝利」

著者はテレビで、共和党の予備選挙でトランプ大統領を見たとき、言動の内容に関わらず、予備選挙を勝ち抜くと確信しました。なぜなら、トランプ大統領には目に見える「欠点があったから」でした。トランプ氏は、起業家として大失敗した経験があります。しかしこれは、汚点や傷跡、欠点ではなく、逆に彼の魅力を引き立たせるものになったのです。人は、口先だけの成功者よりも、失敗した本物の成功者の方が優れていると思うものです。傷跡は、「身銭を切った」ことの証明になったのです。

まとめ

『身銭を切れ』について要約しました。わたしたちはどうしても「失敗を避けたい」「リスクを避けたい」と思ってしまいます。しかし、リスクを避けながら選択したものは、大きな成果には繋がらないのです。逆に「身銭を切った(リスクを取った)」選択であれば、それが巡り巡って大きな恩恵となります。本書をさらに読み込めば、「身銭を切る」ことの「神髄」が手に入るでしょう。

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