【書評】ビジネスの根本原理を学ぶ『トレードオフ 上質をとるか、手軽をとるか』

【書評】ビジネスの根本原理を学ぶ『トレードオフ 上質をとるか、手軽をとるか』

「商品が売れない」「顧客を獲得できない」ビジネスパーソンであれば、誰もが抱える悩みです。世の中にはたくさんの方法やテクニックが語り継がれていますが、実は「本質」を知らない限り、それらは無意味なものとなります。そこで今日は、ビジネスの本質となる考え方についてまとめられた本をご紹介します。


著者・あらすじ

ケビン・メイニー

USA Todayのテクノロジーコラムニストを振り出しに、Fortune、The Atlanticなどに執筆。2007年、コンデナスト社が鳴り物入りで創刊したビジネス誌、Condenast Portfolioの専属記者として迎えられた。

あらすじ

「ジム・コリンズ」お墨付きの著者が、ビジネスで陥りがちな「ワナ」について直言します。「なぜトレードオフなのか?」「上質さ、手軽さとは?」「どう選択すべきか?」など、ビジネスの本質を解説します。

1. 上質or手軽?

本書における重要なキーワードとして、「上質さ」と「手軽さ」があります。そもそもどんな意味があるのでしょうか?実のところ、私たちは普段の暮らしの中で、この「上質さ」と「手軽さ」を天秤にかけているといいます。例えば、野球の試合をスタジアムで観戦するか(上質さ)、テレビで観るか(手軽さ)。おしゃれなレストランで食事をするか(上質さ)、マクドナルドで済ませるか(手軽さ)。

これは企業、非営利団体、政府など大きな組織でも同じ事がいえるといいます。これを踏まえると、ビジネス成功のカギを握るのは「上質と手軽の天秤がどう振れるか」にあるのです。そこで、知っておくべきことが「上質と手軽の考え方」です。それが次の5つです。「上質vs手軽」「テクノロジーの進捗」「不毛地帯」「幻影」「上質の頂点と手軽の頂点」。

ここでは「テクノロジーの進捗」「不毛地帯」「幻影」について説明します。「テクノロジーの進捗」とは、テクノロジーやイノベーションの進捗によって「上質さは上質でなくなり、手軽さも手軽でなくなる」という意味です。「不毛地帯」とは、上質でも手軽でもない商品やサービスは「不毛地帯」に追いやられてしまうという意味です。

「幻影」とは、上質と手軽の両方を追ってはいけないという意味です。スターバックスやCOACHはこの両方を求めた故に失速したといいます。このことから、成功するには「上質さと手軽さ」、どちらを獲得するのかという「トレードオフ」の考え方が必要不可欠だったのです。

2. 「上質さ」について知る

成功のカギを握る「上質」と「手軽さ」。では「上質さ」とは具体的にどんなものでしょうか?著者は「上質さ」を「上質=経験+オーラ+個性」と表現しています。「経験」上質であるかどうかとは、商品やサービスにまつわる「経験」全体によって決まるのが大前提としてあります。最高の経験であれば、価格は二の次になるのです。

「オーラ」実態のない上質感のことです。テレビで観る野球と、スタジアムで観る野球では迫力が違います。有名絵画も、画像で観るのと生で観るのでは、臨場感が違います。このように対象が生み出す迫力、臨場感などの「オーラ」は上質さを際立てます。

「個性」わたしたち消費者が何かを購入するのは、他の人々に「自分らしさ」を伝えるためでもあります。自分ならでは「個性」を人々に伝えてくれる商品には上質さがあるのです。以上から上質さは「経験」「オーラ」「個性」の足し算によって引き上げられるのです。

3. 「手軽さ」について知る

成功のカギを握る「上質」と「手軽さ」。では「手軽さ」とは具体的にどんなものでしょうか?著者は「手軽さ」を「手軽=入手しやすさ+安さ」と表現しています。「入手しやすさ」手軽とは簡単に手に入るという意味です。「iTunes」は、ネット環境さえあればどこでも楽曲が手に入るという「入手しやすさ」によって大ヒットしました。また操作も簡単に使えるようにできているので「入手しやすさ」を底上げしています。

「安さ」文字通り「価格の安さ」のことを指します。安ければ、たいていの人にとって手が届くので、手軽さに加算されます。サウスウエスト航空は、競合他社よりも運賃を低めに設定して座席を埋める戦略をとっています。空の旅のハードルを低くし、身近で手軽にしたことでヒットしました。以上から「手軽さ」は「入手しやすさ」「安さ」の足し算によって引き上げられるのです。

4. 「上質」と「手軽」の留意点

ビジネス成功のカギを握る「上質」と「手軽」ですが、先述した通り「上質」と「手軽」は両立できません。そこで自分のビジネスモデルが「上質」か「手軽」かを判断するための「留意点」について説明します。

著者があげる留意点が次の5つです。

①テクノロジーの進歩を見落としてはいけない
②商品やサービスの成否は、目新しいかどうか、時流に乗っているかどうかよりも、上質と手軽のさじ加減で決まる
③上質と手軽のどちらをどれだけ重視するかは顧客層ごとに異なる
④商品やサービスを小さく生むと、小回りが利くため、テクノロジーの進歩や競合他社の動きに対応しやすい
⑤新しいテクノロジーは必ずといってよいほど不毛地帯で産声をあげる。

とりわけ重要なのが、②と③です。②わたしたちはどうしても、人々を驚かせるような目新しい商品や時流に乗っているサービスを考えようとします。しかし、広大な市場においては、やはり「上質さ」と「手軽さ」がモノを言います。「キンドル」は既存にない、輝かしいテクノロジーの成果ではありますが、大ヒットには至りませんでした。

③上質さと手軽さは「顧客層」ごとに異なります。若者が手軽と感じるテクノロジーも年配者にとっては不便かもしれません。新しいもの好きにとっては、新鮮で意外性に満ちた商品は極上に見えますが、そうでない人にとっては、普通に見えるでしょう。つまり、顧客層によって「上質と手軽」は異なることを知っておかなければなりません。以上の留意点を踏まえながら、ビジネスにおける「上質と手軽」について、考えなければならないのです。

まとめ

『トレードオフ』について要約しました。わたしたちは普段、選択をする時、「上質」と「手軽」の天秤を常にかけていると理解できました。何かモノを買うとき、誰かと話すとき、仕事をするときなど、すべての選択において、上質か手軽かを選択しているのです。これを踏まえながら、自分のビジネスを考えていくことで、正しい戦略を立てることができるのです。

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