【書評】経済の本質を身につける『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

【書評】経済の本質を身につける『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

「将来が不安」「先行きが不透明」と言われる時代です。このような時代において、今、「経済」に多くの関心が寄せられています。しかし、「経済」と一口にいっても、その内容は多岐に渡り、理解に苦しみます。どうしたらもっと簡単に「経済」を知ることができるのでしょうか?その答えは、今日ご紹介する本に委ねましょう。


著者・あらすじ

ヤニス バルファキス

1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。

あらすじ

数々の世界的ベストセラーを持つ著者が、「経済の本質」について語ります。「経済の始まりとは」「なぜ格差があるのか」「市場社会とは」など、経済のことを楽しみながら学べます。

1. 格差はなぜ存在するのか?

世界には貧困や暴力に苦しんでいる子どもたちがいます。そんな格差が存在する世界に対し娘は「パパ、どうして世の中にはこんなに格差があるの?人間でバカなの?」と父に疑問を投げかけます。この疑問に対し、父は「単に世の中には人より賢い人たちがいて、賢いから他の人たちより力を持って、いろいろなことができるということでは?」という新たな疑問を投げかけます。

その「力」とは、「余剰」のことです。余剰とは、「自分たちの食べる分と翌年の収穫のために植える種以外の余った作物」のことです。人類が「農耕」を発明したことで、社会は劇的に変わり、そこで始めて経済の基本になる要素「余剰」が生まれたのです。この「余剰」は、人類を永遠に変える「文字」「債務」「通貨」「国家」「官僚制」「軍隊」「宗教」などの偉大な制度を生み出しました。

どういうことかと言えば、「余剰」が偉大な制度を創り、国家の支配者が軍隊を持ち、武器を装備できるようになり、支配者は「力」をもって、人々を支配できるようになったということです。ここから「格差」が始まります。権力者は自分たちがもっと豊かになることが当然だと思っていて、力がなく貧乏な人たちも、それが当然だと思ってしまっています。この心理が格差を助長してしまっているのです。

2. 市場に必要不可欠な「生産」について

経済は「市場」を抜きには語れません。そんな市場が中心として動く「市場社会」は一体、どうやってうまれたのでしょうか?そのヒントとなるのが、市場社会のはじまりである「生産」です。生産は、市場にとって必要不可欠であり、何かを生産するのに必要な要素は、次の3つです。「生産手段に必要なもの」「土地、または空間」「労働者」

「生産手段に必要なもの」とは、自然から採取する原材料、それを加工する機械、そうしたすべてを置く建物や柵、そしてインフラ一式などがそれに当たります。経済学でいう、「資本財」のことを指します。「土地、または空間」とは、農場、鉱山、工場、作業場、事務所など、生産が行われる場所のことを指します。「労働者」とは、製品を作る人のことを指します。

大昔の社会では、生産に必要な要素は、いずれも「商品」ではありませんでした。「労働者」は、封建社会においては「奴隷」でした。「生産手段」も奴隷自身が作り、「土地」も領主でなければ地主にはなれませんでした。現代は、生産活動のほとんどが市場を通して行われるようになり、3要素は「商品」として、交換価値を持つようになりました。「労働者」は自由の身となり、生産手段は専門の職人によって作られ、土地も不動産市場で売買されるようになったのです。

3. 「富」と「借金」の関係性

経済につきものと言えば「お金」です。実は「富と借金」には、密接な関係があります。封建社会における「余剰」の流れとは、「生産→分配→債権・債務」でした。まず、農夫が土地を耕し、作物を作ります。(生産)そこから領主が年貢を納めさせます。(分配)領主は自分の必要分以外の余った作物を売り、お金を稼ぎ、そのお金で物を買ったり、支払いをしたり、お金を貸したりします。(債権・債務)

しかし、この土地と労働が「商品」となると、生産後に分配するのではなく、生産前に分配がはじまります。どういうことかと言うと、「事業をするために、借金をする」ことです。事業をするには資金が必要で、従業員に賃金を払い、設備投資し、家賃も払わなければなりません。

つまり、「利益」が出る前に、お金が必要になるのです。これにより、借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油となったのです。利益が目的になったのも、利益が出なければ起業家たちは、生き延びることができなかったからなのです。このことから、富には「借金」が必要不可欠であり、「利益」と「借金」は切っても切れない縁となったのです。

まとめ

『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』について要約しました。経済とは、「実体のないもの」と言われます。この実体のないものを知ろうとした時、「正しい知識」が必要になってきます。この正しい知識を手に入れるには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれ、どんな歴史を経て今に至ったのかを知る必要があるのです。

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