【書評】私たちの人生に必要不可欠な“心と時間”について考える『心にとって時間とは何か』

【書評】私たちの人生に必要不可欠な“心と時間”について考える『心にとって時間とは何か』

みなさんは、「時間とは何か?」を考えたことはありますか?時間を表すものとして、「速度」「記憶」などがありますが、今ひとつ答えを出せない人が多いのではないでしょうか?そこで今日は、「時間とは何か?」にヒントを与えてくれる一冊をご紹介いたします。


著者・あらすじ

青山拓央

1975年生まれ。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。博士(哲学)。県立浦和高校、千葉大学文学部、日本学術振興会特別研究員、山口大学時間学研究所准教授等を経て現職。

あらすじ

哲学者が、「心と時間に関する謎」を解き明かします。「時間の流れとは」「過去を描くには」「タイムトラベル」など、「心にとっての時間とは何か」を、哲学の観点から考察します。

1. 「知覚」を知ることで“何か”がわかる

そもそも本書が作られた意図は、「心と時間に関する謎を描き出すことが目的」と著者は述べています。この大いなる目的のために、「知覚」「自由」「記憶」「自殺」「SF」「責任」「因果」「不死」という8つのサブテーマを設けています。このサブテーマをひとつひとつ解き明かしていくことで、「心にとって時間とは何か」がわかるのです。

まず、最初に取り組むべきテーマとして、「知覚」があります。時間の流れを知る上で「今」がヒントになります。「今」という言葉を発すると、心では、2つの作業を行っています。

1つ目が、「今に注意を引き戻す」ことです。これは、まさに目の前の状況が、今の現実であると自覚することです。今の現実に注意を引くことで、「今」を感じることができるのです。

2つ目が、「“今”というしおりを挟む」ことです。人は、自分の人生をどこまで生きてきたかを、はっきりとさせることはできません。この「ボンヤリ感」をはっきりさせるには、「ここまで生きてきた」という“しるし”で、人生にしおりを挟むことです。すると、どこが足場なのかはっきりすることができ、「今」を認識できるのです。

心にとって「今」を認識させるには、注意を引き戻し、「今」にしおりを挟むことで、時間を知覚することができるのです。

2. 「自由」を知ることで“何か”がわかる

「心にとって時間とは何か?」を知るには、「自由」にフォーカスします。「自由」とは、換言すると、「私はいつ決めたのか?」ということです。これは、神経科学者のベンジャミン・リベットによる実験で説明することができます。

実験の内容は、「被験者の好きなタイミングで手を動かす」というものです。脳波計での計測によると、手を動かそうと意志する0.4秒ほど前に「準備電位」という、脳活動が始まっています。普段、私たちは、自由な意志によって手を動かしていると考えられています。「手を動かすという意志」が原因で、手が動いていると考えるのですが、この実験で明らかとなったのが、手を動かそうとする意志よりも前に、脳は手を動かすための一連の作業を開始しているというのです。

この実験から何が言いたいのかというと、「手を動かそう」という「意志決定の時点」を掴もうとする場合、さまざまな比較考量を経て、「自分がある道を進みつつある」時点で、ようやく確信できるということです。

わたしたちは、喫茶店でメニューを選ぶ時、今日どんな服を着るか選ぶとき、自分が実行し始めているのを「自覚する」ことで、自分がそれを選択したことを確信しています。この「自分がある道を進みつつある」時点が、心にとって「時間」を感じる時だったのです。

3. 「記憶」を知ることで“何か”がわかる

心にとって時間とは何かを知るには、「記憶」を知ることもヒントになります。「記憶」とは、「過去の手がかり」を頼りにしたものですが、厳密に言えば、「記憶」「証拠」「理論」の3つに大別されます。「歴史上の人物」にスポットを当てた場合、その人物について「記憶」している人はいないので、「証拠」「理論」によって過去が推測されます。

一方で自分自身の経験はというと、私たちは豊富な「記憶」をもっており、そこには何の証拠も理論もなく、「記憶」だけで過去が推測されます。例えば、「今朝パンを食べた」という記憶は、「想起」によって示したものであり、そこに証拠も理論もありません。つまり「今朝」とは、過去を指示することにはならないのです。実のところ、記憶というのは、「時続きの記憶」であり、「純粋な記憶」というものは存在しません。

「今朝パンを食べた」という記憶を思い返すと、今朝とは、「今日の朝」であり、現在の時刻が午前11時であれば、「午前8時頃」であり、その後、コーヒーを飲んだ。味や見た目も思い出すこともできる。つまりこれは、その場面と場面との繋がり、つまり「時続き」の記憶によって、想起しているのに過ぎないということで、過去を指示するものではないのです。以上のことから過去を指示するのであれば、証拠と理論を切り離してはならないのです。

まとめ

『心にとって時間とは何か』について要約しました。本書は、様々なサブテーマによって成り立っています。これを踏まえると「心にとっての時間の概念」とは、「相対的」でなければ、証明、確認できないと言えます。何かと比べ、「時間」というものが顕在化されるのであれば、私たちの心もまた、何かと比べることで理解できるのではないのでしょうか。

MinSuku
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