【書評】リーダーの“意義と役割”を理解する『社長って何だ!』

【書評】リーダーの“意義と役割”を理解する『社長って何だ!』

「会社の業績が上がらない」「顧客が増えない」と悩むリーダーが増えています。奔走するも、変化がない・・・。こんな時、どうしたらいいのでしょうか?ヒントとなるのは、「社長とは何か?」という根源的哲学です。そこで今日は、1998年、バブル崩壊直後の危機的状況で会社をV字回復させた著者が、「社長の資質」についてまとめます。


著者・あらすじ

丹羽宇一郎

元伊藤忠商事株式会社会長、元中華人民共和国特命全権大使。公益社団法人日本中国友好協会会長、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事。

あらすじ

元伊藤忠商事会長が、社長の「資質と能力」について語ります。「孤独」「覚悟」「使命」「信頼」など、混迷としている時代における社長やリーダーの「本質」について問いかけます。

1. 社長とは「自分を捨てること」

「不正会計」「データ改ざん」など、大手企業の不祥事が後を絶たない時代です。著者はそんな時代において、改めて「社長とは何か?」について問い正します。答えの一つとしてあげるのが、社長とは「自分を捨てること」と述べます。

著者が社長に就任したのは、1998年、バブル崩壊で景気が後退した時期。当時社長から、社長就任への打診を受けた時、思わず返事を先送りします。それは、「自分を完全に捨てる」ことを意味したからです。社長とは、「会社第一」「社員第一」が求められ、緊急事態が起これば、家族よりも会社を優先しなければなりません。「すべてを捨ててまでやる意味があるのか?」という問いに、答えを出さなければならないのです。著者は、信頼している先輩の助言もあって、ついに社長になることを決意します。

この話からわかるのは、自分のことはさておき、会社にすべてを捧げる覚悟がなければ、社長は到底、務まらないということです。社長になるために必要なのは、自分を完全に捨て去る「覚悟」だったのです。

2. 社長とは「信頼の証し」

社長は経営を健全化し、改革を行うことが仕事です。しかし、この「改革」の意志を持っていても、実行役の「社員」が動いてくれなければ、すべてが水の泡です。どうしたら社員が動いてくれるのでしょうか?それが「信頼」です。社長が社員から信頼を得られていれば、社員は自然と動いてくれるようになるからです。

当時、銀行や各企業は、不良債権処理がないように装いながら、少しずつ処理していくという応急措置が取られていました。他の企業は、経営陣が真実をねじ曲げて社員に処理をさせる中、著者は「真実を伝えて」一括処理という改革を成し遂げます。

なぜ、このような改革を成し遂げることができたのでしょうか?それは「社員の支え」があったからでした。社員が社長を信頼し、支えたことで、社内の病巣を取り除くことができたのです。社員との情報の共有がなされ、社長の判断を社員が信頼することで、会社を「変える」ことができるのです。

3. 社長とは「孤独」が必要

社長は社員と共有し、信頼されなければならないと先述しました。しかし、社長は「共有」とは対極にある「孤独」が必要な時があります。著者の信念として、「社長が孤独でなければ、その会社はうまく回っていかない」というものがあります。これは、12年もの社長と会長を務めた体験を通して得られたものです。

「自分が抱え持っている問題や困難、情報を他人に話さない」ことが「孤独に負けない資質」です。人はどうしても、不安や問題を抱えると、「人に話したくなる」性質があります。しかし、こうした衝動に耐えられなければ、社長業というものは務まらないのです。必要最低限のことだけを話し、肝心なことは語らないことで、「沈黙の螺旋」に陥らずに済むのです。

4. 社長とは得るものが「大きい」

「すべてを捨てる」「信頼を得る」「孤独に耐える」など、社長業は人一倍、大変なことばかりです。反面、社長業というものは「得るもの」も、人一倍多いといいます。著者曰く、「自分の決断で何万人もの人間が喜ぶなんて、社長にならなければ経験できなかったことです。このために社長をしているのではないか、このために生きているのではないかとさえ思いました。」

社長には、決断によって会社や社員の運命が左右される、大きな「責任」があります。一歩間違えれば、取り返しのつかないことになりますが、この決断が成功すれば、何事にも代えがたいうれしさを得ることができるのです。

不良債権処理によって業績がV字回復した時のことです。著者は、社員が立ち上がって拍手し、喜んでいる姿を目にしたとき、胸がいっぱいになったといいます。自分の行動によって、多くの人を幸せにすることができる社長業は、人生の幅を大きく広げてくれるのです。

まとめ

『社長って何だ!』について要約しました。著者は最後に、「社長は自分の器以上に会社を大きくできない」と述べています。これは「欲」に関係しています。欲が小さければ小さい会社に、欲が大きければ大きい会社にと、欲の大きさによって会社の規模が決まるのです。つまり、社長とは会社そのものであり、社長の姿とも言えるのです。

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