【書評】“お金の秘密”を体得する『誰もが時間を買っている 「お金」と「価値」と「満足」の社会経済学』

【書評】“お金の秘密”を体得する『誰もが時間を買っている 「お金」と「価値」と「満足」の社会経済学』

「モノが売れない時代」と言われます。そんな中、「コト消費」とよばれる消費スタイルが世間を賑わしています。実は、この「コト消費」が、これからのビジネスシーンに大きく影響してくると言われます。そこで今日は、「コト消費時代」における「価値」についてまとめられた本をご紹介いたします。


著者・あらすじ

鈴木謙介

1976年、福岡県に生まれる。関西学院大学社会学部准教授、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員。専門は理論社会学。

あらすじ

消費社会論の研究者が、「時間と消費の関係」についてまとめます。「時間価値の重要性」「時間価値を高める方法とは」「時間を買う意味」など、これからの時代に必要な「価値」について解説します。

1. 「時間価値」を高めるには?

近年のビジネスシーンで注目を集めている「体験すること」「感動すること」を軸とした「コト消費」。著者は、この「コト消費」において、見落としてはいけないことがあるといいます。それが「消費者が何かを体験する時間の価値を、どのようにして高めればいいのか」という点です。

何かを体験するには、「行列に並ぶ」「移動する」「検討する」などに「時間」を要します。この時間を「価値あるもの」と感じてもらわなければなりません。そこに気づいた著者は「時間価値を高める方法」として、「減産時間価値(引き算の時間価値)」と「加算時間価値(足し算の時間価値)」の2つのキーワードをあげます。

「減産時間価値(引き算の時間価値)」とは、消費に関わる時間から「無価値だ」「ムダだ」と思われる時間を差し引いていくことで、時間価値を高めることです。ディズニーランドの「ファストパス」が好例です。ディズニーランドでは、待ち時間を減らすために、待ち時間という、「ムダ」を差し引いて、時間価値を高めました。

「加算時間価値(足し算の時間価値)」とは、「価値がある」と感じられる時間を増やしたり、伸ばしたりすることで、時間価値を高めることです。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが好例です。USJでは、行列に並んでいる時間もアトラクションが楽しめるような仕掛けになっており、待っている時間も「価値がある」と感じられることで、時間価値を高めました。これからの時代、この「時間価値」をいかに高めることができるかで、ビジネスが大きく左右すると言われます。

2. 「減産時間価値」を高めるには?

では、時間価値のキーワードである「減産時間価値」を高めるには、どうすればいいのでしょうか?その答えを知るには、消費者の「ムダな時間」を明らかにし、対処することです。「ムダな時間」とは、消費に関わる時間が長くなることによって、その他のことに時間を使うことができなくなる「機会損失」です。

これは、同じ行動を短い時間でできたり、何か他のことと同時進行でしたりすることで、最小限にすることができます。重要なのは、「時短」だけが目的ではないことです。浮いた時間を「別のことに使えるようにする」ことを忘れてはいけません。

そして、「機会損失」にプラスして注意しなければならないのが、悩んだ末に選んだ商品がハズレだった時に被る「サンクコスト」です。「サンクコスト」とは、「埋没費用」のことで、すでに支払ってしまった後で、取り返すことのできない費用のことです。これらは、インターネットによるランキングや口コミ情報、インフルエンサーなどの情報の提供によって、選択の失敗を最小限にすることができます。重要なのは、合理性だけでなく、最終的に消費者がその選択に満足することなのです。

3. 「加算時間価値」を高めるには?

もうひとつの時間価値を高めるキーワード「加算時間価値」を高めるには、どうすればいいのでしょうか?それが、「長くても構わない」という時間を提供することです。これは、消費の時間を「いい時間」に変えることで、加算時間の価値を高めます。

例えば、「待たされ時間」を「待ち時間」にすることです。「待たされ時間」とは、期待度が低いのに時間がかかる「時間」のことです。「待ち時間」とは、時間はかかりますが、期待度が高い「時間」のことです。この「待たされ時間」を「待ち時間」に変えることで、「いい時間」にすることができるのです。

実のところ、人は「待ち時間ゼロ」では満足できません。適度な待ち時間、バランスのいい待ち時間にすることで期待値が上がり、「いい時間」にすることができます。さらに、消費の前後の時間まで「いい時間」にすることもポイントです。

これは、消費する時間以外の時間も「いい時間」にすることを指します。商品やサービスの期待を高めたり、満足したことを確認したりし、「消費の中」に埋め込みます。これらを踏まえると、加算時間価値を高めるには、「ムダな待ち時間」を「待つに値する時間」に変えていくことが求められるのです。

まとめ

「誰もが時間を買っている」についてまとめました。著者は最後に、「『せっかくなら、いい時間にしたい』という消費者の気持ちが、サービス業全体を揺るがすような大きな動きになるのではないか」と予想しています。これは、私たち人間がお金より、モノより、「時間」に価値を置いている証拠と言えます。以上を踏まえると、これからの時代は、「いい時間」を起点に考えることが必須なのです。

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