先月末、日産自動車で資格を持たない検査員が新車の完成検査を行っていたことが明らかになった。このような不正を受け、国土交通省は自動車メーカーの社内調査を進めていた。そして、今月27日にSUBARU(スバル)が群馬県の2工場で社内認定の資格を持たない従業員に新車の出荷前の完成検査をさせていたことが明らかになった。
さらに、資格を持たない従業員による完成検査は30年以上常態化しており、社内ではこのような不正に対する問題意識がなかったという。スバルの吉永泰之社長は「安心・安全に関わることで、お客様に不安を感じさせることは、『SUBARU』ブランドとして最もやっていけないことだ」と会見で反省の言葉を繰り返した。
スバルは、無資格検査で国内に出荷・販売して1回目の車検を終える前の車両、25万5000台を対象にリコールを届け出ることを発表している。リコールにはトヨタ自動車にOEM(相手先ブランド製造)で供給をしている人気スポーツカー「86」も含まれる。
無資格検査が30年以上も常態化
スバルは国土交通省に「完成検査員が完成検査を行う」という完成検査要領を提出していた。しかし、スバルの業務規定では、「完成検査員と同じく、十分な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)が認定した者を、監督者(班長)の監督下で検査業務に従事させていた」という。
このように、スバルでは国土交通省に提出した完成検査要領と業務規定が矛盾する状態を「まずいという認識がないまま」30年以上続けていた。完成検査工程の運用ルールでは、研修員に完成検査員のハンコを貸し出し証明書に押印を行わせていたという。
代行押印の問題は公文書偽造にも繋がりかねない問題だ。品質保証本部長を務める大崎篤執行員は「現場で、人のハンコを使うのはおかしいのではないか、と思った者がいても、代々引き継がれていたことを上司に「おかしい」と言える雰囲気ではない」と無資格検査の常態化を認めた。
国土交通省の対応
国土交通省は今月30日、日産・スバル以外の主な国内外の自動車メーカー24社については不正の報告はなかったと発表している。また、スバルに対しては不正の全容や再発防止策などについて、1カ月後をめどに報告するように指示している。石井国土交通大臣は、日産とスバルの無資格検査を受け、検査が確実に行われるように制度を見直す考えを改めて示した。