【書評】普遍的成功法則を知る!『人を大切にする経営学講義』

【書評】普遍的成功法則を知る!『人を大切にする経営学講義』

私たち人間に多大なる影響を与えたコロナパンデミック。とりわけビジネスシーンでは、企業の在り方について大きな課題を残しました。私たちはこの先、どんな企業経営を行うのが正解なのでしょう?そこで今日は、どんな時代でも通用する経営の原理原則について学びを深めましょう。


著者・あらすじ

坂本光司

法政大学大学院政策創造研究科教授。人を大切にする経営学会会長。1947年静岡県出身。1970年法政大学経営学部卒業。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授等を経て現職。他に、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長等、公務多数。

あらすじ

人を大切にする経営学会会長が、「経営」に不可欠とされる概念をまとめます。「企業とは何か」「人を大切にする経営とは?」「経営者の仕事」など、どんな時代でも生き残る経営論をお届けします。

1. 企業とは「社会全体のもの」

本書は「経営学」についてまとめたものですが、まずは経営の大前提となる「企業」について知る必要があります。それが「企業は誰のものなのか?」ということです。一般的な答えとしては、「株主や出資者のもの」「経営者のもの」または「経営者や社員のもの」です。しかし、著者は「社員や取引先、顧客、さらには地域住民を含む、その企業に関わるすべての人々のもの」と述べています。これは「社会皆のもの」という考え方であり、この考え方でなければ、企業は存続することができないといいます。

その理由は、株主や出資者、経営者、社員、顧客、取引先、仕入先の誰かひとりでも欠けてしまったら、企業活動は一日も成り立たないのです。さらに言えば、道路や橋などの公共交通網、水道やガスなどのインフラ、電気やエネルギー、警察や消防、病院に至るまで、実にさまざまな支援を受けて存続しています。したがって、企業は「誰かひとりの力」ではなく、「社会全般」の支援を受けることで、事業活動を行っていることがわかるのです。

しかし多くの企業は、この大事なことを理解していません。業績が落ちれば社員をリストラしたり、仕入先や協力企業にコストダウンを求めたり、理不尽な取引を強要したりします。また、経営者が個人で食事した領収書を会社名にしたり、身内優先の人事をしたりするのは、誰もが目にする光景です。このような公私混同経営を行い、基本原則を忘れてしまった結果、企業は潰れてしまうのです。まずは、「企業は誰ものものなのか」を明確にすることが優先されるのです。

2. 「人を大切にする経営」とは「五方良しの経営」

本書のタイトルでもある「人を大切にする経営学」。これは一体、どんな経営を指すのでしょうか?著者曰く「人間本位の経営学、あるいは人間を経営の中軸に捉えた経営学」と述べます。これは業績や効率、ライバル企業との競争を中軸に捉えるのではなく、企業に関わる人すべてを最優先する経営のことです。一般的な経営は「ヒト」を、業績や効率を高めるための手段や資源として見ます。しかし著者の考えは、「人」を幸せにすることを目的として、モノやカネ、技術といった資源があるという考え方です。つまり企業は、「人を幸せにする」といったことを追求・実現していかなければなりません。

では具体的に「誰」を幸せにするのでしょうか?著者があげるのは、次の5人です。1人目は「社員とその家族」。これまでは「株主第一主義」「顧客第一主義」と考えられていましたが、著者は「社員第一主義」を唱えます。2人目は「社外社員とその家族」。社員だけでなく、その家族も同様、大切にすべきといったものです。社員の家族も企業の仲間、メンバーとして位置づけます。3人目は「現在顧客と未来顧客」。仕入先や協力企業を「コスト・原材料」と見るのではなく、「パートナー」と位置づけます。

4人目は「地域住民・とりわけ障がい者高齢者など社会的弱者」。社会貢献活動はもとより、障がい者や高齢者の雇用責任、幸せ責任も考えます。5人目は「出資者並びに関係機関」です。株主や出資者がいなければ企業そのものが存在しません。これら5人を幸せにする「五方良しの経営」は、経営学の原理原則であり、企業はその役割を果たすことをミッションとしているのです。

3. 経営者には「5つの仕事」がある

人を幸せにすることを目的とした「人を大切にする経営」。では、経営を大きく左右する重要なポスト「経営者」は、どんな考え方でいればいいのでしょうか?著者曰く「経営者は、その企業の最高経営責任者にふさわしい人格、識見、能力をもった優れた人物であらねばならない」と述べます。これは日々、誰よりも苦労、努力し、権威や権限ではなく、自らの背中と心で、公正・適格なリーダーシップを発揮しなければならないといったものです。

現代は「企業間の格差」が拡大傾向にあります。業種別格差や技術的格差はあるものの、その多くは「経営者格差」にあります。経営者に値しない人を経営者にしてしまえば、当然、会社は傾くでしょう。では会社を傾けないために、経営者はどんな仕事を行えばいいのか?著者の定義する経営者の仕事は次の5つです。

第1の仕事は「方向の明示」です。企業がこれから向かうべき方向、道を全社員に明示します。方向性がわからなければ、大海を漂うだけになるからです。第2の仕事は「決断」です。第1の仕事である「方向の明示」において、何をやり、何をやらないのかを決めることです。方向のための「決断」ができなければ、企業は間違った方向に進んでしまうでしょう。第3の仕事は「社員のモチベーションアップ」です。全社員の帰属意識や愛社精神が強ければ、価値のある仕事に心から取り組んでもらえます。その結果は業績として現れるのは、言うまでもありません。

第4の仕事は、「経営者こそが最も働くこと」です。経営者自ら価値のある仕事、リスクのある仕事に率先して行えば、社員はその背中を追いながら仕事をします。第5の仕事は「後継者を発掘し、育てること」です。後継者以外の育成は、部長や課長に任せ、経営者は後継者を育てることに専念します。経営者は教えることで「自らが教わっていく」といった恩恵を受けられます。これら5つの仕事をこなすことで、「人を大切にする経営者」が生まれるのです。

まとめ

『人を大切にする経営学講義』をご紹介しました。著者は冒頭にて「どんな行動にも『目的』『手段』そして『結果』の3つがあるが、最も大切なことは手段でも結果でもなく、「目的」と述べています。よく「ビジネスは結果がすべて」と言われます。しかし結果を優先するあまり、大事なことを忘れてしまい、手遅れになる企業は後を絶ちません。「人」を中心に捉えることが、何より大事だったのです。

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